道東の多重自動車事故の本当の原因
2019年 05月 24日
原因は、強風による砂嵐で視界が悪かったことによるという。
ニュースの映像を見ると、道路脇の畑から土が砂嵐のように吹き飛ばされて道路を越えるように流れていた。これで、前方がまるで見えなくなっていたのである。
ニュースでは単に強風による砂嵐が原因とされていたが、本当の原因は、畑の「耕起」がもたらした砂塵の発生である。
耕起することによって土壌が乾燥し、作物を植え付ける前の強風で、その土が飛ばされたのである。
土壌が乾燥して砂のようになるのは、化学肥料の多用と農薬の散布で土壌の有機物が減少し、結着力が無くなるからだと言われている。
古代文明の興隆は、土壌を耕起することによって作物が多くとれるようになり、人口が爆発的に増えたことによる。しかし、この「耕起」した土壌は、やがて降雨や風によって流亡し、土壌の乾燥も進んで作物がとれなくなり、やがて繁栄を謳歌した文明が衰退していったのである。
D・モントゴメリーの『土・牛・微生物(文明の衰退を食い止める土の話)』に、こういう記述がある。
「カンザスからデンバーへ車で戻る途中、ガイ・スワンソンと私は、有機物の目に見える形跡がない畑を次々と通り過ぎた。肥沃な黒い草原の土を耕していた祖先を持つ農民が、今では薄茶色の土を耕作していることを、私たちは話し合った。その土の色は一世紀に及ぶ現代農業の代償をはっきりと暴き出していた。読み方さえわかっていれば、メッセージは明々白々だ。
国道287号を飛ばしていると、コロラド州イーズの近くで南から風が吹いてきて、すき起こしたばかりの畑から土埃が空へと舞い上がった。まだ午後4時だったが、通り過ぎるトレーラートラックはライトをつけていた。砂埃が私道や畑から道路一面に吹き上げられた。前方の草原の向こうに茶色いカーテンがうねるのを見て、私は車の窓を閉めた。地表の霞は集まって天を指すぼんやりとした指となった。まるで自暴自棄になったダスト・ボウル(中西部の大平原地帯で断続的に発生した砂嵐)の亡霊のように。
しかし道路沿いの草地からは、土はまったく巻き上げられていなかった。ところどころにある、作物の刈り株に覆われた畑からもだ。風は少しでも隙あらば土を持ち去るが、植被が土をつなぎ止める役割を果たすのは明白だ。これは秘密でも何でもない。デンバー空港に近づくと、一帯の不耕起農場がちょうど同じことをやっていた。砂嵐を軽減するために、空港のまわりでは耕起が禁止されているのだ。・・・・・・・・」
ここには、道東自動車道の多重事故そのままの光景が記述されている。アメリカでは、まさにこうした事態が進行しているという。
本州ではあまりこうした現象は起きていないようだが、北海道では農業の規模が大きいだけに、トラクターによる耕起も大規模に行われ、多量の化学肥料が投入され、そうして農薬が散布され、土壌が疲弊していっているのではないだろうか。その結果、降雨や強風によって土壌が流亡し、やがて地表を覆っていたわずかばかりの土が無くなり、岩盤などの地肌が現れてくることになる。
今朝の7時ごろ、マンション裏菜園の中央枠のマルチをそっと剥がしてみた。
そうしたら、亜成体になりかかっているフトミミズが何匹も土の表面にいた。
見て分かるように、土がポロポロの粒状になっている。これはフトミミズが排泄した糞である。マルチをしているところの土の表面は、こういう状態になっている。土の中も同じような状態になっているはずだ。
土の表面にはまだ分解しきれていない落葉が残っているけれど、これもやがてフトミミズが地中に引きずり込んで食べてしまう。
フトミミズが大きくなるにつれて、糞の粒も大きくなってくる。そうなると、理想的な団粒構造の土壌になっていく。
しかし、このような状態にもっていけるのは、木枠に囲まれた小さな菜園だからであって、広大な畑では、落葉堆肥などの有機物の投入は、よほど大規模にやらなくてはならないだろう。
D・モントゴメリーは、耕起するための犂を放棄せよと言っている。そうして、タネを播くところだけをわずかに掘り、そうしてその横に少しだけ肥料を施せと言う。そのための農機具も開発されている。アメリカの農家は、化学肥料会社や農薬会社ばかり儲けさせる慣行農法を見直し、土壌に有機物を投入して作物残渣で被覆し、農薬や化学肥料を減らそうとしている。そして今や、不耕起の農地は全農地の3分の1にまで広がっているという。
道東自動車道で起きたような多重事故を起こさないためには、周辺の畑の耕起をやめ、被覆作物でマルチをつくるか、有機物の投入などの土壌改良をして土が飛ばされないようにするか、あるいはもっと密に防風林をつくることをしなければならないだろう。