マグロも牛肉もウナギもいらない

マグロが食べられなくなる日が来るかもしれないと騒いでいる。ブランド牛肉はまたしても偽装事件だ。ウナギは中国産が敬遠されてから久しい。

マグロを前に食べたのはいつだったか。ずっと以前に仙台朝市で山かけ用のものを買ったのがたぶん最後だった。その前には加熱用の安いもの(1パック300円)を買ってフライにした。2人では量が多いから2日つづけて食べた。寿司などはもってのほか。なぜあんなにマグロで騒ぐのか私には分からない。食べなくても死ぬことはないのに。

牛肉はもう何年前になるか。二女が結婚する前に新居を見がてら東京に行ったとき、婿の母親を交えてしゃぶしゃぶを食べたのが最後。自分で買ったのはいつだったか、もう覚えていない。アメリカ産だとか国産だとか騒ぐ以前に、牛肉を食べるということすら無縁になっている。

ウナギは好きだった。単身赴任時に、築地から活ウナギを買ってきて、頑張ってさばいた。備長炭を熾し、白焼きにして蒸し、自家製のタレをつけて焼いて食べた。
蒲焼になったものを買ったときには、ニラを刻み、その上に一口大に切ったウナギをのせ、煮汁を少し入れて蒸し煮にし、溶き卵をまわしかけた。それもここ数年食べていない。国産ウナギは高いからである。

貧乏くさい話で恐縮だが、食べられなくなると騒いでいるマスコミ関係者は、おしなべて高収入なのだろうと思う。デパ地下で買い物をするような人々も、きっと高収入の家の人々だろう。それは、デパ地下の食料品の値段は、スーパーや市場のものよりずっと高いからである。それは品物がいいという理由もあるだろう。
ふだん当たり前のように食べているマグロや牛肉やウナギが高騰すれば、彼らにとっては一大事なのかもしれないが、私のようにふだんそんな高級食材を食べていない者にとっては、騒ぐようなことではない。ほかに安いものが、いくらでもとは言わないが、あるからである。
先日も、仙台朝市で5匹250円の解凍サンマを買ってきた。今や中国に買い占められて高騰したノルウェー産の冷凍サバの尾部だけの切り身のパックを2つ300円で買ってきた。煮魚にすれば1パックの量で2人で2日分になる。家人はこれをあまり歓迎しない。いじましいと言うのである。私にしてみれば、これは安い割にうまいからたまに買ってくるのであって、ただ安いからというのではなかった。

数十年後には海から魚がいなくなるという予想をする人もいる。人間が獲り尽くすからだという。本当だろうか。
その昔、各国が200海里の線で他国の漁船を締め出したとき、北海道では北方での鮭漁ができなくなるというので、漁業関係者の死活問題だと騒がれた。ところがどうだ。鮭の価格は暴騰して漁業関係者は空前の好景気に沸き、宝石商や呉服商など、バブルに群がる業者が大挙して押しかけたことがあった。
北海道では鮭の値段は安いという。雄などは捨てられているとも聞く。ところが仙台では安く売られているということがない。どうやら流通の問題ばかりではなさそうだ。

人間が食べる大型の魚が獲り尽くされると、小魚は大発生する可能性がある。捕食者が少なくなるからだ。今はイワシも高級魚で、イワシの刺身が大好きな家人は嘆いている。たまに新鮮で安いものがあると迷わず買ってきて刺身にするが、昔は特売で大きなものが1匹10円で売られていた。そんな時代が、ひょっとするとまたやってくるかもしれない。やってこないかもしれないが。

マグロも牛肉もなくなれば、ほかのもので我慢するしかない。クジラの肉がなくなっても日本人は死ななかったのだから、マグロや牛肉を食べなくても、餓えて死ぬことはない。それは食生活のレベルが落ちるということとはわけがちがうことである。レベルが落ちたというのは、鰹節を削らなくなったことにあるし、糠漬けを作らなくなったことにあるだろう。そして、自ら料理をすることなく出来合いの総菜を買ってくることにあるだろうと思う。

お金のある人に対し、生活レベルを落とせと言うのは難しいことにちがいない。ひょっとしたら、筋違いというものなのかもしれない。彼らには彼らの収入に応じた生活を営む権利があるのだろうし、私のように細々と生活している者の云々することではないだろうと思う。だが、日本人がみなマグロを食べ、牛肉を食べて生活しているような報道のしかたに、私は腹が立つのである。

マイダス・タッチ。
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Commented by sakae at 2008-06-25 01:50 x
食糧難で粗食になるのもいいかもね?
Commented by 一拙 at 2008-06-25 14:16 x
安いものを美味しく料理するのが大事。
Commented by kimi at 2008-06-25 15:51 x
瀬戸内海沿岸に住んでいるとマグロは縁がないですねぇ~
マグロマグロって珍重されるのはコレを食べなきゃ!みたいな気にさせるマスコミの影響も大きいように思います
身近なもので美味しくいただけるものが本当はもっと色々あるはずなんですけどね

あと、天候不良で野菜が高騰するのも気持ちが煽られているからで
あれも高い野菜なんて食べなくてもいいじゃないかと
みんなが別の安い野菜を食べて過ごせば
そんなに高くなるはずないんですよね
Commented by 一拙 at 2008-06-25 21:31 x
黒鯛など、釣ってきて食べられる生活は夢のようですよ。
マグロなどのグルメ番組に毒されているから、食べなくてはと思うのでしょうね。
野菜は季節や端境期によって値段がずいぶん違います。今は小松菜が3束100円。ほうれん草など、5束100円という時があると思えば1束150円という時もあって、週一回の買い出しでずいぶん社会勉強をしています。
Commented by kimi at 2008-06-26 16:38 x
一拙さんには信じられないことだと思いますが
せっかく魚を釣っても奥さんが魚を調理するのを嫌うので持って帰れないケースも結構あるようですよ
手軽に食べられるものでなければ敬遠される風潮も問題ではありますね

それにしても
ほうれん草や小松菜が1束50円以下で買えるなんて実にうらやましいです~
Commented by 一拙 at 2008-06-27 12:47 x
このごろはカツオ1匹を800円で買ってきます。
アラはみそ汁仕立てにして、刺身とたたき、漬け丼にして2日間はいけます。冊にしたものを買うなんて、もったいない。
こちらは野菜は安いのですね。
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by 130atm | 2008-06-24 14:51 | 日常雑感 | Comments(6)

民草のつぶやき


by 一拙
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