夏のイカ

子どものときからイカは嫌いだった。
それは、親父がイカを大好物にしていたからだ。よくイカの塩辛や刺身を肴にして、酒を飲んでいた。

私がイカの料理で旨いと思ったのは、イカ団子である。これは母がイカを刻んでミキサーにかけ、苦労してつくっていたのを記憶している。ミンチ状態にして油で揚げるのだが、手間をかけた料理は美味しいという見本のようなもの。

単身赴任をしていたとき、業務用のフードプロセッサを合羽橋で手に入れたが、これでまずイカ団子をつくろうと思った。
苦労したのは、皮を剥ぐこと。新鮮なのは苦もなく剥がれるというが、漁港が近いわけではないから、冷凍ものか、生でも鮮度抜群というものはめったにない。
イカを適当に刻んだら、ネギをざっと刻んで加える。ショウガは摺り下ろして絞り汁だけを加え(繊維が残っていると刃に絡まって切れ味が悪くなる)、全卵を入れ、塩胡椒を振り、最後に片栗粉を入れてざっと混ぜる。そうして2回か3回に分けてフードプロセッサにかける。あまり細かくせずに中途半端にするのが旨いイカ団子をつくるコツだ。
つくるのは大変だが、一度にたくさんつくって冷凍しておくと、常備菜になる。醤油に芥子を加えると、おかずばかりでなく酒の肴にも持ってこいだ。

仕事の取引先で知り合った八戸の人がいる。私とはまるで違うタイプの人だが、好人物なので誠実に対応していたら、もう20年以上も歳月がたった。
その人は私が料理好きで包丁が趣味というのを知っているので、去年イカを送ってくれた。函館ばかりでなく、八戸もイカの水揚げが多いのである。
今年もお盆前に送ってくれたが、時期的に少し小ぶりなものの、夫婦2人で食べるには多かったので、家族の多いお隣にもお裾分けをした。

到着した日にはさっそくイカ団子をつくり、刺身にした。刺身にするには、イカの皮を剥ぎ、まず横に切ってから、できるだけ細く包丁を少し立てて縦に引くように切る。イカそうめんのように薄く2枚にしてから切るという芸当は私には無理。

イカ団子は申し分なし。刺身も美味しかった。勢いをつけて塩辛もつくってみたが、最初から生臭さがあって、数日たってもそれが消えない。去年は寒くなってから送ってもらったので絶品の塩辛ができたけれど、夏のイカでは塩辛は無理のようだ。
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by 130atm | 2008-08-19 21:54 | その他 | Comments(0)

民草のつぶやき


by 一拙
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